ようこそ山茶花病院へ

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やはり医者だった様だ。 「俺、川で意識なくなったことまでは覚えているんですが、誰かがこの病院に運んでくれたんですか?」 「ええ。偶然通りかかった方から救急車の要請がありまして、病床に空きがあったウチに運ばれてきたんですよ。あ、素足のままで寒いでしょう。これ使ってください」 岡部先生はそういうと俺の方に袋から取り出したスリッパを差し出した。 青色で細身のよくトイレに置いてあるやつにそっくりだと思いながら、それを受け取って両足に履く。 そうすれば医者はステーションの真ん中にあった大きな机の下からキャスター付きの椅子を取り出して、俺に座る様に促した。 「少しお話しましょう。まだ貴方も状況が掴めていないと思うので」 その言葉に素直にありがたいと思った。 俺は岡部先生の言うとおりに椅子に座ってゆっくりと息を吐く。 椅子は年期が入っていて座り直す度にキイキイ音が鳴る上に、クッションなんてもう散々色んな人のお尻におし潰されていて正直あまり良いすわり心地とは言えなかった。     
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