Ⅱ:everyday

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 国民経済、天然資源、領土、軍事力とあらゆる方面で世界最大を誇るマスデニア帝国。 その中心にある帝都グラナスはおびただしい数のビルが立ち並びその隙間を道路や路面リニアモーターカーの線路が網のようにはりめぐらされている。マスデニア帝国自体が世界最大の領土を持っているのと同時にここもまた世界最大の大きさを誇る都市である。 帝都グラナスの東部に位置するヘイゲンシティーに都立ヘイゲン工芸高校はあった。生徒数は全学年で420名とかなり少なく生徒数に比例するかのように学校自体の大きさも小規模で、上空から見るとHの形をしているというほかは外観に特に特徴は無くどこにでもあるような高校である。  そんな学校の夕日が差し込む廊下をぐったりしながら歩く男子高校生がいた。生まれつきの赤く澄んだ瞳にやや長めに整えられた黒髪、身長は180センチ丁度でどちらかというと細めの体系、そして彼が着ているただでさえ重い藍色の作業着はその格好でマラソンでも走ってきたのかと勘違いするほど汗で湿っていて全体的に色が変色していた。作業着の左胸に安全ピンで留められているネームプレートにはアレン・シュトラウスと刻まれていた。 「AAFのコクピットの内装クーラーが故障なんて聞いてねーよ・・・」  アマチュア・アーセクトフレーム、通称AAFは元々軍事力補強のために製作された歩行型汎用機動兵器の技術を兵器としてではなく小型化し、建設業者などが使用する重機として運用できるようにしたものである。従来の重機などよりも多くの面で優れている事から今の建設業などにはなくてはならない存在となっている。重機と同じくこれを操縦するには運転免許が必要で、この都立ヘイゲン工芸高校は工芸科目の専攻をしているだけでなくAAF運転教習所の運営もしているのである。機械工学の仕事に就きたいと考えているアレンはその免許取得の為の実習を終えたところであった。 ため息交じりの愚痴を吐きつつアレンは汗で濡れた髪を首からかけていたタオルで拭いた。 アレンが不意に窓に視線を移すと模擬実習用のAAFが格納作業が行われているところが目に入った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!