1章 絡みつく罠 囚われの妖精

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1章 絡みつく罠 囚われの妖精

囚われていた時に見上げた月は、白く美しく満ちていて、遥かな高みでただ輝くばかりだった。 でも今は。 あなたと寄り添って見上げる欠けた月は、あの満月のように神々しくはないけれど、清かな光がすうっと胸に染み入ってくる。 ティナはそっと自分の指を、彼の指に絡めた。 お願い、と祈りがこぼれる。 祈りは涙となって、横たわったその人の頬や髪にぱたぱたとこぼれ落ちていく。 お願い・・・目を開けて。 約束したわ。 一緒に月を見ましょう、と。 見ているわよ、今。 綺麗なのよ、とても。 ティナの波打つ髪が月光を浴びて、見る者もないのに、金色の花のように淡く輝いていた。
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