一両目 心の旅路

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「それで、君は兄の恋人ってことでいいのかな?」 「え? いえ! 違います!」  突如、人の心に入り込み、中をあばこうとする千路の質問。  不意打ちを受けたウサミミがアワアワと焦ったので、千路は吹きだした。 「そうかあ。兄もとんでもないなあ。こんな若い子に手を出して」 「そんなんじゃないです! 所長は、とっても、とっても、真面目なんですから!」  真っ赤な顔で関係を否定すればするほど、千路は疑いを確信に変えていく。  そこに、曳野がガタガタと音を立てて帰ってきた。 「お帰りなさい!」 (いつもの鉄ヲタメガネが帰ってきたー!)  喜んだウサミミは、飛びかからんばかりに駆け寄った。  それを千路は見つめている。  曳野は事務所に弟の千路がいることに驚きすぎて、ウサミミの事など全く目に入っていない。
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