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「千路! なぜここに!?」
「ちょいと手伝ってほしいことがあってね。探偵の兄さんにさ」
千路は立ち上がると、曳野の元にやってきた。
「と、言ったけど、ウソ! 本当はお袋に頼まれて様子を見にきただけ。なんにも連絡してこないし、実家に顔を出さないから、死んでんじゃないかと心配して俺に様子を見てこいとうるさくて」
「そうか。いろいろ忙しくて……」
言い訳をする曳野に、千路はニヤニヤしながら言った。
「こんなかわいい子と一緒なら、楽しくて、楽しくて、実家のことなど思い出さないよな」
「違います!」
ウサミミは慌てて否定した。
「所長は! 鉄道の趣味で忙しいんです!」
「おいおい、それを言うなら、仕事で忙しいと言ってくれよ」
さすがにウサミミのその言い訳を、素直に受け入れることなどできない曳野は即座に否定した。
「ブッハハハハ!」
千路は、二人のやりとりがおかしくて大笑いした。
「二人とも息ピッタリじゃないか。面白いなあ。安心したので今日はこれで帰る。またな」
千路はウサミミにバイバイと指先だけ動かすと、事務所を出て行こうとしたが、一瞬止まると、ウサミミに言った。
「兄さんがこんなに明るくなったのは、君のお蔭もあるかもな」
そして、サッサと出て行った。
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