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「なんだ、あいつは。突然やってきて……」
出て行った弟の背中を、曳野は呆れながらも優しい視線で見送っている。
仲の良い兄弟なんだと、ウサミミにも分かった。
曳野はドアを閉めると、事務所内を見渡した。
「千路は僕のコレクションをいじっていかなかったか?」
「……」
触ったと言えば怒られそうな気がして、ウサミミは黙っていた。
曳野は、ウサミミを視界の端にとらえながら鉄道グッズが置かれた棚を眺めた。
そして、プルマン・カーに近づくと、「これを触ったな?」と、たくさんある鉄道グッズの中から、見事にビシッと指した!
ピタリと当てた曳野に、ビックリしたウサミミは思わず口走った。
「所長! なんで、分かったんですか!? 位置がずれてました? きちんと元通りに戻したはずなんですが……」
「やはりな……」
曳野は「フフフ……」と、口の端で笑った。
「え? もしかして、今のは適当に選んで、私を引っかけたんですか?」
たとえそうだとしても、プルマン・カーを選んだことは凄いのだが。
「違うね。ウサミミ、君が教えたんだよ」
「私が?」
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