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マンションを出ると、消防車とパトカーが数台集まって、物々しい雰囲気になっている。
大勢の警察官と救急隊が、倒れている若い男性を取り囲んで話し合っている。
その男性は千路だったので、曳野とウサミミは驚愕した。
「千路!」
大声を出しながら駆け寄った曳野に、警察官の一人が、「お知り合いですか?」と聞いてきた。
「弟です! いったい何があったんですか!?」
「どうやら、背中を刃物で刺されたようです」
「なんだって!?」
曳野は取り囲んでいた警察官らを押しのけると、千路に近づいた。
白いTシャツは血で真っ赤に染まり、顔は血の気が引いて白くなっている。
「千路! 何があった!?」
目を閉じていた千路は、その声に応えるように薄く目を開けた。
「兄さん……」
まだ、意識はあるようで、曳野とウサミミはホッとした。
「誰にやられた?」
「分からない……」
千路は、そのまま意識を失ってしまった。
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