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「千路! しっかりしろ!」
曳野は心配のあまり、たまらず大声で叫んだ。
「ストレッチャーに乗せます」
救急隊は、用意したストレッチャーにテキパキと千路を寝かすと、「このまま救急搬送します」と、救急車に運び入れた。
「お兄さんも一緒に乗ってください」
「いえ。私は乗りません」
「え?」
曳野は、自分の名刺を救急隊に渡した。
「病院が決まったら、ここに連絡をお願いします。すぐにいきますから」
「分かりました」
赤色灯を光らせながら走り出した救急車。
曳野は、角を曲がって気配がなくなるまで見送った。
同乗しなかった曳野に、ウサミミは不思議に思った。
こういう時は、付き添うものじゃないのだろうか?
「所長、なぜ、一緒に乗らないんですか?」
「それは、犯人を絶対に捕まえたいからだ」
先ほどまで興奮していた曳野だったが、もう冷静になっている。
冷静になった曳野は、物凄い集中力で事件を調査する。
そうなった曳野に、今まで解決できなかった事件などなかった。
だから、今回もきっと犯人を捕まえるだろう。
しかしウサミミは、周囲に沢山いる警察官たちに今のセリフが聞こえていなかったかそちらが心配になった。
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