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「所長、こんなにたくさんの警察の方が動いているんですから、任せて病院へ行った方がいいんじゃないですか? 千路さん、たくさん出血していたし、もしかしたら家族の血液が必要かもしれませんよ」
「あいつと僕は血液型が違うから、残念ながら輸血できない。そのへんは病院に任せるよ。ああ、そうだ。両親には連絡しておかなきゃな」
曳野は電話を掛けた。
驚かさないようにとの配慮からか、「千路が体調を崩して救急車で運ばれた。病院が決まったらまた電話する」と伝えている。
電話を切ると、「これでよし。本当のことをいうと卒倒するからな」と、言った。
それから、ウサミミに向いた。
「僕は、千路が刺されたときの状況について調べて犯人を捕まえる。こういうことは早ければ早いほどいいんだ」
「でも……。冷たくないですか?」
冷淡じゃないかとなじるウサミミに、曳野は正直な心情を吐露した。
「弟に付き添い、励ましたい気持ちはもちろんあるさ。でも、あいつはそんなにやわな奴じゃないと信じている。それ以上に、あいつだって、目が覚めたときに犯人が捕まっていて欲しいと願うはずだ。犯人に対する腹立たしい気持ち、悔しい気持ち、絶対に許せない気持ちを僕たちは共有している。千路と僕の行動は同じだ」
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