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「いらっしゃいませ」
「あんた、誰?」
やや驚いた顔で男は聞いてきた。
まるで、先制攻撃をするような勢い。
しかも、探るような目つきでウサミミを観察してくる。
(なんなの? この人)
失礼だなと思ったが、素性もよく分からない上、曳野もいないので、丁寧に答えた。
「ここで働く所員です」
「所員? 君みたいな子が、ここで何するの?」
初対面の人間に、ずいぶんと不躾な態度をとる失礼な男だ。
最初に感じた親近感は、あっという間にどこかへとんで行ってしまった。
「いろいろです」
細かく教える必要性を全く感じないので、ざっくりと答えた。
「女子高生なのに、ここで働いているってこと?」
「そうです」
ウサミミは客の戸惑いを理解した。
(そうかー。高校の制服の上にエプロンだもの。この恰好で探偵事務所の所員ですって言われても、すごい違和感だよね)
「アルバイトか?」
ウサミミは辟易した。
面倒くさくなったので、「そんなもんです」と合わせた。
それで男はようやく納得したようで、「ここの所長は?」と、今度は曳野について聞いてきた。
「外出中です」
「じゃあ、戻るまで待たせてもらうよ」
堂々と中に入ってこようとするので、ウサミミは慌てて制止した。
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