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「ちょ、ちょっと待ってください!」
「俺は、大丈夫だよ」
(何が、大丈夫!?)
ウサミミは、意味が分からない。
制止が効かず、男は勝手に中へ入ってくると、曳野のコレクションを眺めだした。
その背中に、ウサミミは言った。
「いえ、そういうわけには……」
この仕事は、誰からどんな恨みを買っているか分かったもんじゃない。
この男が果たして敵なのか、それともそうじゃないのか、分からない時点で中に居られてはたまらない。
「所長に電話で確認しますから」
「なんだよ。心配性だな。そんなに言うなら、電話すれば?」
「分かりました。えっと、お名前ですが……」
「お、プルマン・カーがある」
男は棚に置かれた古臭い昔の寝台車の模型を手に取ると、ひっくり返して眺めたのでウサミミは慌てた。
「わあ! 触らないでください! 怒られます!」
「ああ? 分かったよ」
焦るウサミミに免じて、男はそれを元の位置に戻したのでホッとした。
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