一両目 心の旅路

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「ちょ、ちょっと待ってください!」 「俺は、大丈夫だよ」 (何が、大丈夫!?)  ウサミミは、意味が分からない。  制止が効かず、男は勝手に中へ入ってくると、曳野のコレクションを眺めだした。  その背中に、ウサミミは言った。 「いえ、そういうわけには……」  この仕事は、誰からどんな恨みを買っているか分かったもんじゃない。  この男が果たして敵なのか、それともそうじゃないのか、分からない時点で中に居られてはたまらない。 「所長に電話で確認しますから」 「なんだよ。心配性だな。そんなに言うなら、電話すれば?」 「分かりました。えっと、お名前ですが……」 「お、プルマン・カーがある」  男は棚に置かれた古臭い昔の寝台車の模型を手に取ると、ひっくり返して眺めたのでウサミミは慌てた。 「わあ! 触らないでください! 怒られます!」 「ああ? 分かったよ」  焦るウサミミに免じて、男はそれを元の位置に戻したのでホッとした。
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