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「何人が応じてくれるかな。それ以前に聖杯の機嫌次第だが、まあ多少は指向性を持たせることができるさ」
フェイスレスが髭を触りながら、自分が組み上げた聖杯の術式に最期の手を加える。
「アインツベルンとマキリに遠坂。人間にしては凄いものを作ったのね」
まるで自分は人間ではないかのような言い方をして、妲己が笑みを浮かべた。その顔は魔性の物と言われてもおかしくはない、妖艶さと恐ろしさを合わせた、ある種の美しさを持っている。
「かの魔道元帥が関わっているからね。当然だよ」
あいつらだけでで出来るはずがない、と付け加え、フェイスレスは術式を魔法陣に投げ込む。
「えー……良くそんなもの解析できたわね」
「なに、基本は所詮カビの生えた刻印を後生大事に背負っている御三家の物さ。奴らの考案にしては良くできてるし、大聖杯の準備には手間取ったけどさ。ほら、僕ってば天才だからね」
祝杯のつもりなのか、二人分の杯にワインを注ぐと自画自賛をし、顔を歪ませる。その表情はまるで子供のように純粋な笑顔であったが、邪悪さを感じる物だった。
「白金ちゃんってばさすがね」
からかうような口調で、妲己がフェイスレスの名を呼んだ瞬間、部屋をどす黒い感情が渦巻く。
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