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車で送ってもらった大学病院で、私は消えてなくなったとばかり思っていた痣の数々を医者に撮られた。
「大丈夫。この写真は証拠にするだけですから」
痣のでない殴りかたをしたところで、細胞は受けたダメージを記憶するのだと、医者は告げた。
今頃同僚や上司たちが警察に居ると思うと、不思議な感覚がする。
「辛かったろ、横沢」
瑞旗が言った。
「お前の会社、病死した社員の遺族がパワハラの数々が書かれた日記を警察に届けて捜査を依頼してたんだ。捜査しているのがばれたら社員への締め付けが強くなっちゃうから、水面下で捜査が進んでたんだ。そんで、この会社が社員旅行先に選んだウチにも捜査協力の依頼が来たってわけ。っておい、なんで泣いてる?」
「助けてくれて、ありがとう」
鼻水を垂らしながら告げる私。絵になってなさすぎる。
「いや別に、俺が助けた訳じゃないし」
そう照れくさそうに言う彼は、あの露天風呂にまつわる不思議な伝承を話してくれた。
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