水を得た魚

4/4
前へ
/8ページ
次へ
 色々あって三年後。私はあの宿で働いている。子がいない若旦那と若女将にえらく気に入られた瑞旗は、次期若旦那の有望株だ。  そんな彼に、露天風呂に呼び出された私。従業員はなんだか視線を交し合って変な感じ。 「あああのさあ」  テキパキ仕事をこなして古参からの評価も高い彼が、やたら言いにくそうにどもっている。 「どうしたの?」 「あのさ、俺と付き合ってくれないかな……!」  私と彼の顔から、ゴジラのごとく炎が噴き出た。 「ええええどうしたの」 「だだだめかな」 「いいいいいいよ、っていうかむしろウェルカムだよおっ」  ぱあん、とクラッカーの割れる音がした。 「未来の若女将誕生、おめでとうございます!」  従業員たちが、なぜが下手な仮装して、そこにいた。 「んごぉ」  私は諸事情により、小野篁と結婚することに相成りました。お付き合いの許可しかだしてないのに若女将ってもう!  怒鳴ろうと思ったのに、件の小野篁が顔を赤らめて俯いていたら怒れない。くっそ、ルール違反だぞこの野郎……! 「ありがとう、私に生きる場所を与えてくれて」  言う言葉が見つからなくて、仕方なく私は彼に礼を言った。 (了) ※ここにでてくる伝承は私の創作です
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加