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「……あれ?梨香子先輩は?」
……いない。
次は相原君のとこに来てくれる順番かと思ったのに。
首を巡らせても、大部屋のどこにもいなかった。
「後でくれるのかなー」
だいたいチョコ配りは昼休みか夕方だし。
***
夕方。バレンタインデーであろうと容赦なく、欧州部の忙しい時間が始まった。
現地から盛んに連絡が入る時間帯だ。
ロンドンの戸川っちからの電話の終わりに、激まず菓子の文句を言っておいた。
「ひどいよ戸川っち。しかもあんな大袋、どうするんだよ」
『じゃ海事で配っとけば』
「戸川っちからって言うからね。あ、成瀬ちゃんも一個味見してくれたよー。あと、チョコくれた!成瀬ちゃんからチョコ貰えるなんて感動だよ!」
『……』
「夜のきのこ、戸川っち食べたことないよね?」
『……あいつとあんまり喋るなよ』
「なんで?」
『……』
「なんでー?」
『なんでも!』
戸川っちにしちゃ捻りのない返しに笑ってると『お前のアホがうつるからだ!』と怒られた。
遠くに離れてると、さすがの戸川っちも見境なくヤキモチを妬くらしい。
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