相原君のアンハッピー・バレンタイン

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戸川っちとの電話を終えて大部屋を見渡すと、アジア部はそろそろ店じまいのようで、梨香子先輩の机もきちんと片付いてるのが見えた。 もう帰っちゃった? 部屋中見ても、やっぱりいない。 毎年くれてたのに。 欧州部の他のみんなには配ってたのに。 「数が足りなかった、とか……」 気休めの言い訳を呟いてみたけど、心の中がきゅぅぅと捻れたみたいに侘しくなった。 机の下の紙袋の口からは戸川っちや成瀬ちゃんや美香先輩から貰ったたくさんのお土産とチョコが覗いている。 でも、どれもしくしく痛む心の隙間を埋めるには足りなかった。 なんでだろう? どれも嬉しくて大事なのに。 何が足りないんだろう……。 「相原」 忙しいのにパソコンを打つ手を止めてボンヤリしていると、ずっと待ってた声がした。 振り向くと、もうコートを着てバッグを肩にかけた梨香子先輩が立っていた。
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