相原君のアンハッピー・バレンタイン

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*** 帰り道。 マフラーに顔を埋めながら、駅から家までの商店街の雑踏を歩く。 「さみぃよー……」 最近テレビで紹介されたらしく、決してお洒落とは言えないこの下町にもカップルの姿が目立つようになった。 梨香子先輩も今頃あんなふうに誰かと過ごしてるんだろうな……。 すれ違うカップルを横目で見ながら、そんなことを考えた。 商店がまばらになると、この時間は犬の散歩にたまに出会うだけの住宅街に出る。 賑やかな家族でワサワサする家にまだ帰る気になれなくて、立ち止まって暗い夜空を見上げた。 心って、体のどこに入ってるんだろう? 胸だか分からないどこかがシクシクする。 その痛みを紛らわそうと、夜空に白い息を何度も吐き出した。
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