相原君のアンハッピー・バレンタイン

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胸の底がチリチリする感覚を覚えながら、激マズ菓子を口に放り込んだ。 「うわ……どう間違ってこんな味になったんだろ」 チョコなのに不気味に臭い。 「ほんとだ。口の中から味が消えないわ。後でお茶買って帰ろ」 同じく食べた成瀬ちゃんも顔をしかめた。 「あと私からチョコ。いつかの話のやつ、きのことたけのこの夜バージョン、もう食べた?」 「え、こんなん出てるの知らなかったー」 「夜のきのこって、ネーミングがすごいよね、ふふふ」 怪しい名前に妙にウケる成瀬ちゃんの背後を、梨香子先輩がチラッとこっちを見ながら通り過ぎた。 「以上。ごめんね。数ばっかりで変なのばっかりだね」 「ありがとー!すごく嬉しいよ」 「残業の時にでも食べてね、夜のきのこ。ふふ」 またネーミングにウケながら、じゃあねと手を振って成瀬ちゃんが去っていった。 意外にも下ネタいけるらしい。 去年のやつれた成瀬ちゃんとは全然違う、本当に幸せそうな成瀬ちゃんの背中を見送ってると改めて嬉しくなった。
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