第1話 初めまして

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「表向きは普通の神社と一緒。大体の人には除霊と言う必要もないし、知る必要もない。だから、まとめて"邪気祓い"と表記しているの。学生の時には学べなかった知識が多くて覚えるのは大変だけど、頑張ってくださいね」 イヌの使い魔を肩に乗せて微笑む宮司は、やっぱり見惚れてしまうほど綺麗だ。 自然と新人三人の声が揃い、返事が静かな部屋に響く。 そんな俺達を見つめていた瀬田さんが何度も頷きながら言葉を発した。 「うんうん、良い返事だね。困ったことがあれば、先輩達に頼りなさい」 「先輩に聞く前に、まずは自分で考えてみるということを忘れないように」 「はい!」 宮司さんも禰宜さん達も良い人だ。 肩に入っていた力が抜けて、自然と仕事への意欲が湧いてくる。 無意識のうちに膝に置いた手で拳を握っていた。 (よし、頑張ろう) そして、話し終わった禰宜さんが祿郷さんに視線を向けて、言葉を促す。 それに祿郷さんが困った表情を一瞬したかと思えば、俺達の方を向いてにやりと笑った。 「最初は血反吐を吐くと思うけど、頑張ってね」 その言葉に、うっと思わず声が漏れる。 でしょうね。そんな簡単なことではないのはわかっている。わかっているけど、不安にさせないでほしい。 「はい!」 他の2人は反射的に返事をしていたらしい。 返事をした後に俺の声が聞こえなかったことに疑問に思い、視線を向けてきた。 宮司さんと禰宜さん達は笑みを崩さず俺に視線を向けてくる。 祿郷さんはニヤニヤと俺を見つめる。くそ、一瞬遅れただけだし! 「……っ、はい!よろしくお願い致します!」 ―――俺の、社会人生活の第一歩が今此処で始まった。
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