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「なあ、成川ー」
「なんだー?」
午前は「四垂」を作る。
四垂とは、神社の注連縄や玉串についている雷のような形の白い紙だ。
紙なのですぐに汚れて破れやすいので、たくさん作る必要がある。
作り方は簡単、白い紙をで四垂切包丁と呼ばれる専用の包丁で切るだけ。不器用さんも安心の工作業務だ。
「そういえば、朝に祿郷さん見てないよな。今日研修を担当してくれるのに」
「んー?……そういえば見てないなぁ」
「寝坊か?いや、そんな風に見えないけどなー」
此処の神社の規模はそんなに大きくない。
有名な観光神社では、神主だけで50人くらいいるが、ここはたったの11人。この人数でもそこそこ大きい方に入る。
そんな田舎神社なのに、ここはすごく人気なのだ。毎年50人は受けにくるとか。倍率はどの神社よりも高い。
そして、なぜ俺が受かったのかわからない。成績も、身分も平平凡凡に近いのになぁ。
「──手を止めるなよ」
「あ、悪い」
不意に聞こえた声に、俺の意識は現実に戻る。
その声の主は一緒に作業していた同期、立花 光毅だ。
じろりと俺を睨み、また自分の作業に視線を移す。
この男は、第一印象から俺の苦手なタイプかもしれないと思っていたが、やっぱり合わないようだ。
真面目なのはいいことだけど、硬いというか、陰険そう。一緒にいても面白くないんだよなー。
そんなことをつらつらと考えていたら、ふと静かな部屋にオルゴール音が響いた。
「もうお昼か」
「ほんとあっという間だな」
12時から13時までは休憩時間だ。
お弁当が支給されるので、手が空いたものから各自昼食をとる。
午後からも、ご祈祷番以外は自分の仕事に戻る。
神社は祭事やイベントは殆ど午前中に入る為、午後からの方が手が空くことが多い。
それにより、俺達の研修も午後から行われるのだ。
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