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「よっしゃ、いちばーん!」
「今度は成川が一番か。次は──…同着か」
今度は成川が一番だった。
速さ的には立花だったのだが、参拝者に「笑顔で挨拶」ができていなかったので1週追加。
俺は逆に参拝者に挨拶をしたら、持ち前の人当たりの良さが裏目に出てしまい、世間話に付き合うことになり出遅れた。
参拝者に罪はないのだ。無下にはできないからな。
ゴールした瞬間倒れこみ、体全体で空を仰ぎながら呼吸を整える。
太ももと膝が震えている。もうこれ以上は無理だ。もう走れない。
「ほら、立て。次は座学だ」
「なにするんですか?」
「今日は宮司と個人面談だ」
残り1時間は宮司さんと個人面談だそうだ。
本日宮司さんが帰ってくるのが夕方だったので、その時間に座学を合わせたらしい。ああ、納得。
1人20分。待ち時間は大学ノートに今日学んだことを書いていく。
俺は3番目なので、一番最後だった。
「終わった。犀葉」
「ああ」
2番目の立花が出てきて、次に俺の番。
研修部屋から宮司さんの部屋は同じ建物である社務所の中にある。
歩いて1分ほどで部屋の前に着いた。
そして、ノックを3回。
待っているとすぐに「どうぞ」と声が聞こえた。
「失礼します。お疲れ様です」
「お疲れ様です。さあ、どうぞ座ってください」
宮司さんの部屋は謂わば校長室のような感じだ。
部屋の奥に宮司さんの作業机があり、その後ろには壁一面の本棚に隙間なく本が詰まっている。
机の前に3つのソファと木のテーブルが置かれている。
1人用ソファが2つと2人用ソファが1つだ。
宮司さんが1人用ソファに座っていたので、2人用ソファに座った。
「犀葉くん、ここでの生活はどうかしら」
「はい、仕事内容はまだまだですが、この土地には慣れてきました」
「良かった。わからないことがあったら遠慮なく聞いてね」
「はい、ありがとうございます」
ああ、やっぱり優しい。天使だ。疲れた身体も癒される。
わかってはいたが、神主は殆ど男だ。
神社は男しかいない。巫女がいる神社もあるが、ここは少ないらしい。
女の人に飢えている中、大輪の花のような美しさの宮司さんには本当に癒される。俺の動力源だ。
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