第19話 研修会―壱日目 夜―

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「ひえー…これは怖い」 「ああ、いるな」 「ここからだと……3人かな」 すんすんと成川が鼻を鳴らす。 匂いでわかるって犬かよ。そう思いつつ、俺も屋敷を見る。 確かに空気は5月なのに寒気がするほど冷えきっている。 ふと2階の窓を見る。無人のため部屋は真っ暗で何も見えない。 しかし、その瞬間――闇の中の何かと、確かに目が合った気がした。 ――にぃ 「……っ」 無人の家の筈なのに、確かに俺と目が合い、笑みが深まった。そう感じた。 途端にぞくぞくと悪寒が全身を支配する。 なんだ、一体なにがあの屋敷にいるんだ。 「うわぁぁあ!?」 突然、叫び声が聞こえてきた。 どうやら屋敷の中から聞こえたようだ。 「っ、どうする?」 「どうするって行くに決まってるだろ」 「ほら、行くぞ犀葉!」 「 こっち開いてるよー 」 ああ、俺の同期達は男前すぎる。 成川に背中を押されて、俺は璃音が見つけてくれた壊れた塀の隙間から中に入った。 屋敷の戸をゆっくりと押すと、戸はぎぃと重い音を立てて開いた。 ますます俺の不安を煽る音だと思いつつ、家の中を覗き見る。 勿論灯りはついておらず、窓から差す月の光のみが家の中を照らしている。 外観の通り、家の中も洋館のようだった。広い玄関ホールに、正面には階段がある。 無人の家ということもあり、埃臭い。 「怖ー…」 「負の心を持つと寄ってくるぞ」 「いつもの空元気はどうしたんだよ、犀葉」 「わ、わかってるよ!」 「うわっ!っ、テメェ!なにをっ!いってぇ」 突如上から聞こえてきた声に、びくりと肩を揺らす。 なんだ、なにか揉めているのか? その疑問とほぼ同時に、無意識のうちに俺の足は階段へと向かっていた。 「おい、犀葉!」 後ろで立花の声が聞こえたが無視をして先に進む。 玄関の正面にあった階段を螺旋状に駆け上がると、部屋を結ぶ廊下に出る。 そこには――5人の男達がいた。 「おい、どうしたんだよ!」 「それはテメェだろ!」 2人の男が中心で揉めているようだった。 1人は馬乗りになり、暴れる両手を地面に押さえつけている。 残りの3人のうち、1人は尻もちをつけたまま、残りの2人も掴みかかっている2人に慌てて駆け寄っている。
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