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「ひえー…これは怖い」
「ああ、いるな」
「ここからだと……3人かな」
すんすんと成川が鼻を鳴らす。
匂いでわかるって犬かよ。そう思いつつ、俺も屋敷を見る。
確かに空気は5月なのに寒気がするほど冷えきっている。
ふと2階の窓を見る。無人のため部屋は真っ暗で何も見えない。
しかし、その瞬間――闇の中の何かと、確かに目が合った気がした。
――にぃ
「……っ」
無人の家の筈なのに、確かに俺と目が合い、笑みが深まった。そう感じた。
途端にぞくぞくと悪寒が全身を支配する。
なんだ、一体なにがあの屋敷にいるんだ。
「うわぁぁあ!?」
突然、叫び声が聞こえてきた。
どうやら屋敷の中から聞こえたようだ。
「っ、どうする?」
「どうするって行くに決まってるだろ」
「ほら、行くぞ犀葉!」
「 こっち開いてるよー 」
ああ、俺の同期達は男前すぎる。
成川に背中を押されて、俺は璃音が見つけてくれた壊れた塀の隙間から中に入った。
屋敷の戸をゆっくりと押すと、戸はぎぃと重い音を立てて開いた。
ますます俺の不安を煽る音だと思いつつ、家の中を覗き見る。
勿論灯りはついておらず、窓から差す月の光のみが家の中を照らしている。
外観の通り、家の中も洋館のようだった。広い玄関ホールに、正面には階段がある。
無人の家ということもあり、埃臭い。
「怖ー…」
「負の心を持つと寄ってくるぞ」
「いつもの空元気はどうしたんだよ、犀葉」
「わ、わかってるよ!」
「うわっ!っ、テメェ!なにをっ!いってぇ」
突如上から聞こえてきた声に、びくりと肩を揺らす。
なんだ、なにか揉めているのか?
その疑問とほぼ同時に、無意識のうちに俺の足は階段へと向かっていた。
「おい、犀葉!」
後ろで立花の声が聞こえたが無視をして先に進む。
玄関の正面にあった階段を螺旋状に駆け上がると、部屋を結ぶ廊下に出る。
そこには――5人の男達がいた。
「おい、どうしたんだよ!」
「それはテメェだろ!」
2人の男が中心で揉めているようだった。
1人は馬乗りになり、暴れる両手を地面に押さえつけている。
残りの3人のうち、1人は尻もちをつけたまま、残りの2人も掴みかかっている2人に慌てて駆け寄っている。
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