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「……なんだこれ」
あまりの光景に茫然と立ち尽くす俺。
そこに、成川と立花も駆け寄ってきた。
「おい、津堅!正気に……っ、戻れって!」
「お前がな!」
「青山!手を貸すぞ!」
「目崎!足を頼む!」
3人に両手両足を掴まれた男。
暗かったが、窓から差す月の光で顏はぼんやりと見えた。
揉める4人の中に入る勇気がなかった俺は、近くに尻もちをついたままの男に尋ねることにした。
「大丈夫か?」
「……っ、…霊が…」
ガタガタと震える男。
両手で頭を抱えたまま俯き、落ち着いて話をできる雰囲気じゃなかった。
今、「霊」と言ったよな?
つまり、「此の世ならざるモノ」がいるのか…?
「霊障か」
そう呟き、ポケットから塩水を取り出した立花。
俺も同じく塩水を取り出して、視線は4人から離さずに一呼吸。まずは状況を確認する。
取り押さえているということは、あの掴まれている人物が憑りつかれているのか?
暗い上にはっきりと顏が見えないので、俺は目を凝らすように集中させた。
「おい!俺じゃねぇよ!」
「手荒なことして悪いな、津堅!今からお前を正気に戻すからな!」
「ちがっ…」
1人の男がポケットから取り出したのは、液体の入った小瓶だった。
男は小瓶の蓋を開けて、押さえつけられている男に液体をかけようとする。
その時、馬乗りになっている男の口が、不自然なほど弧を描いたのがはっきりと見えた。
ぞくり、と悪寒が俺を襲う。
「おい!憑りつかれてるのは、乗っている男だ!」
「……え?……うわっ!?」
「 ヒヒヒ! 」
「そのまま頭下げとけよ!」
俺の言葉とほぼ同時に、乗っていた男が勢いよく顔を上げて、小瓶を持っていた男に掴みかかる。
しかし、それを制したのは駆け寄った成川の蹴りだった。
勢いのまま蹴られたせいで、乗っていた男は地面に転がり落ちる。
「大丈夫か!?」
「ああ、悪い…」
成川は小瓶を持っていた男、俺と立花は馬乗りにされていた男と足を押さえていた男の2人のところに駆け寄った。
俺と立花の方の2人は大丈夫らしい。怪我はないが、状況に唖然としている。そんな感じだった。
ゆらりと憑りつかれた男が起き上がる。
瞳孔が開き、まるで肩に力が入りきってないかのように両腕を垂らしたまま起き上がる。
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