第19話 研修会―壱日目 夜―

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「……青山」 小瓶を持っていた男がそう呼んだ。 しかし、誰がどう見ても異常行動を起こしているようにしか見えなかった。 完全に霊障だ。目の前の男は「此の世ならざるモノ」に憑りつかれている。 ゆっくりと起き上がった男は、まっすぐ俺達を見据える。 その瞳はらんらんと輝いているようだった。 「 ァ、ハハ!待ってたよ!ゲームをしよう!キミたちの中にボクが隠れるゲーム! 」 「はぁ?」 「 ボクはキミたちの中にしか入らない。それを見つけたら、キミたちの勝ちだよ。負けたら、体はボクがもらうね 」 まるで愉快犯だ。 ケラケラと笑いながら俺達1人1人を指差していく。 まるで、よく子どもの時にやった「だれにしようかな」と言われているようだった。 ああ、此処に来てからずっと鳥肌が止まらない。嫌な気配もどんどん増していく。 ゆらりと青山という男に靄が纏っているのがはっきりと見えた。 「 『かくれんぼ』、スタート 」 「――ふざけるなァ!」 突如そう叫んだのは、先程小瓶を持っていた時に襲われた男だった。 ポケットから取り出したのは、白い紙。 その紙を地面に置いた瞬間、その男の前に宙に浮いた液体が出現した。 液体はゆっくりと形を変えて、鋭く尖ったものに変形していく。 「おい!それ、仲間だろーが!」   俺が青山という男に視線をに向けると、ニタニタと笑ったままだ。 その表情に恐怖心はない。逆にその表情がさらにこちらの恐怖を煽る。 恐怖と混乱で男が式神で液体を発射した瞬間、ふと憑りつかれていた青山という男の体の力が抜けた。 「やめろ!」 咄嗟に駆け寄る。 あんな鋭い針を受けたら、死ぬかもしれない。せめて僅かでも動かせられれば! そう思いながらも駆け寄ったが、どう考えても回避する時間がない。 ぎゅっと目を瞑り、衝撃に備えたが――それは自身の体を襲うことはなかった。 「 あきら。大丈夫? 」 「璃音!」 それを弾いてくれたのは璃音のようだ。 俺と式神を飛ばした男の間に立ち、右手首をまっすぐ前方に立て、首だけ俺の方に向いて声をかけてくれた。 璃音が守ってくれた、そう脳が判断した瞬間、俺は璃音に駆け寄った。
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