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「璃音!怪我は?」
「 ふふ、ないよ。やっと役に立てたね、お兄ちゃん 」
「ああ、兄の面目丸つぶれだよ」
璃音に怪我がないと知り、ほっと息を吐く。
そして、俺は倒れている憑りつかれていた男に視線を向ける。
目を凝らすが、先程のように靄はない。
嫌な気配もこの男からはしない。
すると、成川と立花も駆け寄ってきた。
「ほんとにムチャしかしねぇな。はい、塩水」
「悪いな。――祓ひたまへ 清めたまへ」
そう言って、男に塩水をかけていく。
苦しむ様子をもないので、この男からは先程の霊は確実に離れていると判断してもいいだろう。
本当は邪気祓いができる神社に行くのが一番なのだが、今の状況では無理そうだ。
すると、4人の男達が俺達に歩み寄ってきた。
「おい、お前らは何者だ?邪気祓いを知っているなんて、どこの神社だ」
「開口一番にそれかよ。仲間の心配しろよ!」
「そして自分から名乗れ」
俺達の汚い言葉遣いに「お前ら、柄悪すぎだろ」と笑う成川。
いや、お前も失礼だよ、そう心の中で突っ込む。
すると、先程一番最初に押さえつけられていた男が、少しだけバツが悪そうにしつつ口を開いた。
「さっきは助かった、ありがとう。俺達は楓彩八幡宮の者だ。俺は津堅だ」
「楓彩…?」
その言葉に反応したのは、珍しく立花だった。
ちらっと視線を向けると、眉間に皺を寄せて俯く。
なんだ、どうしたんだ、コイツ。
そう思いつつも、自己紹介を聞いていく。
一番最初に押さえつけられていたのが「津堅」、少し癖のある短髪に背も高い。奥二重瞼の少しつり目。名前と風貌が一致していない。
次に足を押さえつけていた男が「目崎」。背は俺くらいで、坊主頭に生気のない瞳。
次は憑りつかれた仲間に対して式神を使った男が「相良」。体格も良く、背も高い筋肉男。
部屋の端で震えていたのが「湯田」。背は俺よりも低く、小柄。小動物系。
最後に憑りつかれていたのが「青山」。背は俺くらい、他の特徴は、先程の印象が強すぎてわからない。
「お前らの奉職先は?」
「俺達は、桃華八幡宮だ」
「……桃華、」
俺が言葉を発した瞬間、明らかに雰囲気が変わった。
なんというか、俺達を見る瞳の色が変わったと言うべきか。
まるで仇を見るような目だ。
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