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「じゃあ、立花さんの…」
「立花?」
そう首を傾げて、立花に視線を向けると、立花が珍しく俯いていた。
いつもなら「なんだよ、睨むな」とでも言いそうなのに。
すると、津堅は立花をじろじろ見て、見下すように鼻で笑った。
「ああ、キミのいろんな話はよく聞いてるよ。会えて良かった。よろしく」
「あ?」
「おい、やめろって」
怖い顔をしたまま津堅に歩み寄り始めた立花の肩を掴むが、すぐに払われてしまった。
しかし、諦めずにもう一度肩を掴んだら、今度は引いてくれた。
それにほっと息を吐く。こんなところで喧嘩をしたらほんとにマズイ。
そんな俺達を見て津堅は、にやりと笑みを深めた。
「桃華八幡宮って言ってもたいしたことねぇな。式神もまともに使えないのに、よく邪気祓いの一宮なんてよく言うよな」
「それも楓彩八幡宮に譲ったらいいのにな」
「一宮」というのは、その地域、環境で一番格が高い神社を意味する言葉だ。
つまり、桃華八幡宮は、邪気祓い界での一番大きな神社ということか。
へえ、人気も出るわけだ。そう他人事のように納得した。
そして、目の前の男達を見る。神主なのに、なんて小さい男なんだろうか。小学生かっつーの。
「……よくわかんねぇけど、お前らみたいなのが一宮にいたら、神社界も世の末だな。神主として、見本になる器じゃねぇもんな」
「なんだと?」
「あーはいはい!人の神社の悪口を言うのは終わり!こんなとこでもめてどうするんだよ!」
俺の言葉に、小さく笑ったのは立花だ。
それと同時に、楓彩八幡宮の男達が睨んでくる。
それを止めたのが成川だった。
「せめて場所を変えてくれ」
「はは、成川、悪いな」
「……チッ、とりあえず、此処から出るぞ」
成川の一言で我に返った俺達は、半端駆け足でその屋敷から出た。
眠ったままの青山は、相良が背負っていく。
先に楓彩八幡宮の奴らが行くので、ついていっているようで、少し不満だったが、仕方ない。
帰り道は一緒なのだと自分に言い聞かせて、俺達は再度裏口からこっそり中へと入る。
そのまま各部屋へと向かった。
もーいいかい
まーだだよ ふふっ
もーいいかい
――もういいよ はやくボクをみつけてね
第19話 了
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