第20話 研修会-弐日目 朝―

3/9
前へ
/344ページ
次へ
「……犀葉?何してるんだ」 突如後ろから聞こえた声に、ビクッと肩を揺らしてしまった。 振り返ると、そこにいたのは不審そうな目で俺を見る立花だった。 いつもと変わらない筈の表情なのに、今日は何故か少し不安になった。 ―――もういいかい 頭の中にこびりつく声。 ないとはわかっているが、立花になりすましているってことはないよな。 「いや、別に。見られてる気配を感じて来ただけ」 「……そうか」 そう言うと、立花はちらっと階段に視線を移し、そして俺に戻す。 しかし、無言だ。お互い無言なので、気まずい。 というか、男が2人で見つめっていても気持ち悪いだけじゃないか。 「なんだよ」 「……昨日、」 「―――おはようございます。あと15分後に研修室に集合してください。持ち物は筆記用具のみ。部屋の金庫に貴重品は入れてください。服装は、運動ができる格好に、運動靴を履いてきてください。繰り返します……」 立花の言葉を遮るように鳴った放送。 それに耳を傾けていた俺だが、一通り聞いたところで、今度は他の神社の人達が部屋から出てきた。 みんな研修用の白いジャージを着ている。 「おーい!立花!犀葉!急げー」 今度は成川の俺達を呼ぶ声が聞こえた。 俺が「わかってる!」と返事をして、立花に視線を戻す。 すると、立花が大きく溜息を吐き出したかと思うと、そのまま俺に背を向けて部屋へと歩み始める。 「おい、立花。話は?」 「後で言う」 そう言って、少し駆け足で部屋に行ってしまった。 なんだ、アイツ。やっぱり昨日から少し様子が変だ。 特に「楓彩八幡宮(そうさいはちまんぐう)」の名前が出てから特に変だと思う。 先程の腕のことも含め、いろいろ不安になることが多そうだ。 気を引き締める為に、自身の両頬を叩くと、俺も駆け足で部屋へと向かった。
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1540人が本棚に入れています
本棚に追加