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「……犀葉?何してるんだ」
突如後ろから聞こえた声に、ビクッと肩を揺らしてしまった。
振り返ると、そこにいたのは不審そうな目で俺を見る立花だった。
いつもと変わらない筈の表情なのに、今日は何故か少し不安になった。
―――もういいかい
頭の中にこびりつく声。
ないとはわかっているが、立花になりすましているってことはないよな。
「いや、別に。見られてる気配を感じて来ただけ」
「……そうか」
そう言うと、立花はちらっと階段に視線を移し、そして俺に戻す。
しかし、無言だ。お互い無言なので、気まずい。
というか、男が2人で見つめっていても気持ち悪いだけじゃないか。
「なんだよ」
「……昨日、」
「―――おはようございます。あと15分後に研修室に集合してください。持ち物は筆記用具のみ。部屋の金庫に貴重品は入れてください。服装は、運動ができる格好に、運動靴を履いてきてください。繰り返します……」
立花の言葉を遮るように鳴った放送。
それに耳を傾けていた俺だが、一通り聞いたところで、今度は他の神社の人達が部屋から出てきた。
みんな研修用の白いジャージを着ている。
「おーい!立花!犀葉!急げー」
今度は成川の俺達を呼ぶ声が聞こえた。
俺が「わかってる!」と返事をして、立花に視線を戻す。
すると、立花が大きく溜息を吐き出したかと思うと、そのまま俺に背を向けて部屋へと歩み始める。
「おい、立花。話は?」
「後で言う」
そう言って、少し駆け足で部屋に行ってしまった。
なんだ、アイツ。やっぱり昨日から少し様子が変だ。
特に「楓彩八幡宮」の名前が出てから特に変だと思う。
先程の腕のことも含め、いろいろ不安になることが多そうだ。
気を引き締める為に、自身の両頬を叩くと、俺も駆け足で部屋へと向かった。
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