第1話 初めまして

5/8
1157人が本棚に入れています
本棚に追加
/286ページ
「はい、では次」 「はい。僕は" 立花 光毅(たちばな こうき)"と申します。『邪気祓い』を学ぶため、志望しました。よろしくお願いいたします」 うわー、丁寧な挨拶だな。 そう思いながら話す彼を観察する。 綺麗に整えられている短髪の黒髪、背丈は俺と変わらないだろう。つり目気味の三白眼のせいか、眼差しはきつく見えるかもしれない。 なんか、固そうだ。俺と性格が合わないような気がする。 「はい、最後」 「はい。僕は" 成川 晴久(なりかわ はるひさ) "と申します。実家は島根県の神社です。よろしくお願いいたします」 あれ?聞いたことがある声だ。 そう思いながら振り返ると、本当に知っている人だった。 というか、同じ大学の同期だ。確かゼミも一緒だった。 うわ、今まで全く気付かなかった。 短髪癖毛で、俺よりも少し背が低く眼鏡をかけている。 大学の授業の実習では名前順で2つの班に分けられることが多く、あまり関わりはなかった。 じっと見つめていると、気づいた成川も俺を見てにっと笑う。 ああ、気づかなかったのは俺だけなのか。 「よし、3人の名前はわかったね。今日からよろしく」 瀬田さんの言葉とほぼ同時に、戸からノック音が聞こえた。 「はい、どうぞ」と柴崎さんが返事をすると、ゆっくりと戸が開く。 その顏を認識して、俺は慌てて姿勢を正した。 入ってきたその人こそ、この桃華八幡宮のトップ――― 「自己紹介は終わった?」 ――羽賀 知子(はが ともこ)宮司なのだ。 「お疲れ様です、宮司。今、自己紹介が終わりました。何か一言あればどうぞ」 腰まである長い黒髪。凛とした顔立ちの中の、二重瞼の大きな目が俺達を捉える。 顔だけでなく立ち振る舞いもすらりと綺麗なこの女性は、日本では数が少ない女性宮司なのだ。 「改めまして、こんにちは」 「こんにちは」 「宮司の 羽賀 知子です。仕事内容に関しては、禰宜から聞くと思います。私からは1つだけ……。皆さん、" 一期一会 "を大切にしてくださいね」
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!