第2話 神主の日常

1/7
1158人が本棚に入れています
本棚に追加
/286ページ

第2話 神主の日常

――神主の朝は早い。 「……おはようございます、柴崎さん」 「ああ、おはよう。犀葉」 朝、6時起床。7時出社。 神社で潔斎としての沐浴、体を清めた後は境内の掃除だ。 俺は" 犀葉 瑛(さいば あきら) "、今年で23歳。ピチピチの社会人1年目、デビューしてまだ1週間。 この桃華八幡宮で奉職している神主だ。 「おはよう、犀葉くん。良い朝だねぇ」 「おはようございます」 掃除箇所は分担するのだが、今日の俺は参道の掃除だ。 竹箒で掃いていると、朝早くから参拝者の人達とすれ違う。 朝早くに来る人は大体いつも一緒だ。日々の散歩のコースとして組んでいる人も多い。 「此処にくると、空気が澄んでてええなぁ」 「そうですね。緑が多いですから」 この神社は、山に近いところにあるので周囲に緑も多い。良い土地だと思う。 ただ、出社する時の階段はしんどい。 それを毎日登ってくるこのおばあちゃんを心から尊敬している。 俺なら無理だ。仕事じゃなかったらこんな山を登る気にならない。 「みんな良い人たちやし、気持ちええわぁ。ありがとう」 「いえいえ、参拝者の方も良い人たちばかりで、僕達も嬉しいです。いつもありがとうございます」 「まあ」 そんな会話を楽しみつつ、9時半頃に境内の掃除は終わる。 そこからは、各々仕事に就くのだ。 神社もシフト制になっていて、部屋にある大きなホワイトボードにスケジュールが書かれている。 今日の予定は、午前は四垂作り(しでづくり)と、午後から研修か。 げっ、研修担当は、祿郷さんか。やだなー。スパルタなんだよなぁ。 今日のご祈祷番は、禰宜の瀬田さんと権禰宜の片岡さんだ。 出仕である俺は、まだご祈祷ができない。 神社にも、階級がある。 宮司(ぐうじ) 禰宜(ねぎ) 権禰宜(ごんねぎ) 出仕(しゅっし) 桃華八幡宮ではこの4つだと聞いた。神社によっては、人数の多さで、さらに細かくなっているところもある。 ここはあまり大きな神社ではないので、こんな感じなのだろう。 そして、俺は出仕、謂わば研修生みたいな感じだ。 人数は出仕3人、権禰宜5人、禰宜2人、宮司1人の合計11人がこの神社で働いている。
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!