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「じゃあ――…ッ!?」
ぞくり。
繋げようとした言葉は、一瞬にして消えた。
いきなり足を止めてしまった俺に、渚さんは不思議そうに首を傾げて俺を振り返る。
気配は左からだ。そう思って、視線を移し、目を凝らす。
すると、左からガサガサという足音が聞こえてきた。
「あ!ララ!」
「あっ!ダメだって!」
俺よりも一歩先にいた渚さんには、その足音の正体がわかっていたようだ。
思わずその足音に向かって駆け出したので、俺も慌てて止めるために駆けた。
「ッ!」
そこにいたのは、確かに犬だった。
整った茶色の毛並み、くりんと丸まった尻尾、目元の白のワンポイントも魅力的な特徴この犬は、人気の犬の一種だ。
赤い首輪とリードもついているので、この犬で間違いないのだろう。
だが、少し雰囲気がおかしかった。
以前出会った兎ほどではないのだが、目が血走ったように赤く、今にも噛みつきそうな風貌でこちらを睨んでいたのだ。
兎と違い、犬なので人見知りをしていると言われてしまえばそこまでなのだが、どうも様子がおかしい。
「ララ!おいで!」
しかし、渚さんはそんなことに気づかずに、一目散に走り、犬を抱きかかえようと手を伸ばす。
その瞬間、確かにその犬はその細い腕に噛みつこうとその大きな口を開けた。
「きゃっ!?……いたっ」
「すいません!」
咄嗟に俺が肩を掴み、思いっきり後ろに引いたことで犬は対象物を噛めずにカキンという歯が合わさる音が聞こえた。
危ない、とほっと息を吐くのもつかの間、俺はポケットから塩水を取り出す。
3つしか持ってきていないのだが、こういう時でも、きちんと持っていて正解だった。
「え!?なに?どうして、私を噛もうと……」
「危ないので、そこにいて。少しだけ手荒なことをしますが、許してください」
渚さんは尻もちをついたまま混乱しているようだ。
まあ、仕方ない。再度向かうよりも、そこで座っていてくれた方が、なんとかなりそうだ。
視線を前に戻し、渚さんを庇うように前に出た。
(さて、認識からだ)
まずは強さのランクからだ。
おそらく、甲(一番低級。黒い靄に近い。殆ど霊体化できない)ではない。靄ではなく、何かに憑りついているのだから。
そうすると、残りは2つだ。
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