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四月、オレは高校三年になった。
本日、始業式。
前方十数メートル先に、オレの彼女、久堂小枝<くどう・さえ>を見つけた。
肩下まで伸びた黒髪を上から半分纏めて、水色のシュシュで留めている。
オレは彼女の元へ駆け出していた。
「おはよう、小枝。髪の毛に桜付いてる。」
髪の毛とシュシュの隙間に桜の花びらが一つ。
オレはそれを取りながら小枝に話しかけた。
「あ、栄田<さかえだ>、おはよう。
ホントだ。どこで付いちゃったんだろう?」
他に付いていないか自分で頭を撫でながら言う。
「この辺り桜の木ばっかりだからな。」
小枝の頭をもう一度覗き込みながら、「もう付いてないよ」と伝えると、「そ」と言ってニコッと微笑んだ。
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