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グレープフルーツ
グレープフルーツの香りが
漂ってきたのを合図に
アドルフの話を打ち切って
ナポレオンの話題に切り替えた
四角いカバンとくるぶしの間に
孤独な風が一陣吹いて
西に向かった窓が開く
木漏れ日に裏切られた私が
揺れる傘に語りかけるのを止め
視線を空ろにしながら
今日 五つ目のため息をついた時
後ろに流れていたひばりの歌も終わる
どぶろくのラベルが待っていた
棚のムーミンの視線に気づかず
行き止まりの廊下を歩く
馴染んだ違和感を
ブログの下書きに突っ込み
壊れつつある心に
三点リーダーを複数付ける
また時代が変わった
メンテナンスを欲する身体と
空間を支配したがる感性とが
周囲にあふれる匂いを嫌い
窓が四角いことを気付かせた
いつのまにか風は生暖かくなり
見せかけだけの家具から
オレンジの要素が消えていく
無言でつむじ風を抱き締めた
そのまま目を閉じて
この時間が終わるのを待っている
無我夢中とか闇雲が懐かしい
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