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プロローグ
うだるような暑さの7月下旬。
応援席の一部を除いて、ガラガラの球場にサイレンが鳴り響いた。
それと同時にホームベース付近に整列していた選手が礼をする。
「「っした!」」
ありがとうございました、と言っているつもりなのだろうが、ここからでは何と言ってるのかさっぱりわからない。
でも、こちらのベンチに帰ってくる先輩や同級生が泣いているのは分かった。 先輩の中には泣き崩れて、他の選手に支えられている人もいる。
そう、ウチのチームは負けたのだ。
スコアボードを見てみると、両チームとも見事なまでに1回表から9回裏まで0以外の数字が並んでいた。
19対17。いわゆる乱打戦というやつだ。取っては取られ、取られては取り返す。プロ野球ではなかなか見られないようなスコアのシーソーゲームだった。
相手が甲子園出場経験の豊富な強豪校なのに対し、ウチは万年一回戦敗退の弱小校だからこれでもよくやった方だと思う。
実際、スタンドからは疎らではあるが暖かい拍手と「よくやったぞ!」という善戦を讃える歓声が聞こえてくる。
でも、それを聞いてもずっと選手達は胸を張ることなく俯き、悔し涙を流していた。
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