第一章・第一話。荒野を行く!前編

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道無き道を進んでいると、遠くに建造物が見えた。 志郎は「ようやく町を見つけた」と安堵し、その町へ向かう。 町に入ると、外観とは違い、かなり栄えていて。 町の人は誰もが笑顔で、活気に溢れていた。 「おぉ、すげぇ。まるで現実世界の町みたいだな」 志郎は、町の完成度の高さに見惚れながら町を歩いていると、飲み物を売っているショップをみつけた。 町の魅力に魅了され、すっかり忘れていたが。今の自分に一番必要な物は水分だった。 「えーと、買い物をしたいんですけど・・・?」 果たして、NPCのこれに話し掛けて買い物ができるのだろうか?と、疑問に思いつつも、他に手段も思いつかないので声を掛ける。 すると、意外な事にもNPCの店主が返答をしてきた。 「お、いらっしゃい。何をお求めかな?今なら、このナナシジュースがおすすめだよ!」 「へー、ナナシジュース?リンゴじゃないのか。いくらですか?」 俺の所持金は、スタート時に支給された50,000コインだけだが、飲み物1つなら買えるはずだ。 それにしても、ナナシジュースって、もしかして梨のジュースなのか? だとしたら、あまり飲みたくないな・・・。 「10モルだ」 「はい。10コインですね・・・ん?モル?」 聞き間違いだろうか?店主の男性がコインではなく、モルという違う単位を口にしたように聞こえた。 念のため、手に持った10コインを出す前に、もう一度確認をしておこう。 「すいません。10コインですか?」 「コイン?いや、10モルだ。悪いがモル以外の通貨は扱っちゃいない」 なんだと!?コインで買い物ができないなら、コインの存在意義はなんだ!? まさか、銃器を買ったり、カスタマイズをする時に使う通貨がコインで、町で買い物をする時はモルという通貨が必要になるのか!? し、知らなかった。NPC相手とはいえ、少し恥ずかしいな。 「す、すいません。待ち合わせにモルはないです」 「モルを持っていない?もしかして、兄ちゃん。外国の人かい?」 外国?国の設定まであるのか!?ということは、国によってそれぞれ通貨があるってことか!? FPSなのにそんな所に拘る必要あるか!? 「まあ、お金がないならしょうがないな。稼いでからまた来てくれ」 やんわりと「冷やかしなら帰れ」と言われた気がする。 しかし、面倒な設定をしてるなぁ。このゲーム。
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