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第一章・第一話。荒野を行く!中編
神様に助けを求める10分前。谷口志郎は、先ほどまでいた町「クライ」の住人に崇められている、水神の御神体が祀られているらしい洞窟に来ていた。
なぜ、無神論者の志郎が、神様が祀られている場所に来たかというと「神様に失礼をしたんだから、ちゃんと詫びないと」いけないからだ。
もちろん。志郎自身が言い出したわけではなく、町のお爺ちゃんからの発案だ。
「しっかし、不思議な洞窟だなぁ」
辺り一面、光源になるような物なんてないにも関わらず。洞窟の中はとても明るく、洞窟の突き当りまでハッキリと見える。
この洞窟はとても入り組んでおり、ここまで明るくなければ間違いなく迷子になってしまうだろう。
「・・・ん?なんか、あそこだけやたらと暗いな?」
洞窟を進んでいくと道の一部だけ陰になっており。志郎には、まるでゲームのテクスチャバグのように見えた。
そのため、何の警戒心も持たずに、陰に近づいてしまう。
「ッ!う、動いたッ!?」
志郎が陰に近づくと、陰は一斉にニュルニュルニュルと動き始めた。
志郎はヒップホルスターに差していたP226を抜き、照準を蠢く陰に合わせる。
「た、頼むから。それ以上動かないでくれッ!」
見ていて吐き気がする陰。志郎の悲痛の嘆きに、無慈悲にも少しずつ姿を露にしだした。
そいつらはまるで、昆虫ゼリーを真っ黒にし、デカくしたような姿だった。
「くっ!き、気持ち悪いんじゃああああ!!」
絶叫と共にP226を撃つ。広く狭い洞窟に、銃声が轟く。これがゲームなら、目の前で蠢く物体にHPバーが表示され。ダメージでHPが減っていることだろう。
しかし、物体の頭上にHPバーは表示されず。物体は未だにニュルニュルと蠢いていた。
「・・・じゅ、銃が効かない!?FPSで銃が効かないって、じゃあ何使えばいいんだよ!?」
そして、志郎は気が付く。自身の犯した過ちの大きさに。先ほどの銃声が、洞窟全体に響いていたこと。そして、洞窟の奥が先ほどと違い、暗くなっていたことに。
そっと、右足を後ろに引く。本能が告げる「このままここにいたら、間違いなくやばい」と警報を鳴らしている。
「ッ!うおおおおおおおおお!!!」
ザッ!と振り返り、入って来た入口を目指し走り出す。しかし、行く先々に黒い陰が立ち塞がる。
道を変えることを余儀なくされながらも、志郎は無我夢中で走り続ける・・・。
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