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「もう!流石に!撒けただろッ!?」
後ろを振り向き、やつらがいないことを確認し安堵する。
しかし、万事うまくいったわけではない。やつらを撒くために入り組んだ洞窟を縦横無尽に動き回ったせいで、今、自分がどこにいるのか分からなくなってしまった。
「・・・あっ、MAPがあるか」
MAPがあるから大丈夫。そう思っていた時期が私にもありました。
・・・メニューを開き。MAPを選択するが、表示されたのは「読み込みに失敗しました」という、希望を絶望に変える一言だった。
「ど、どうすればいいんだよ・・・。こんな洞窟からMAPなしで出られる気がしないぞ」
ここで嘆いていても仕方がない。とりあえず、このまま道なりに進んで行こう。
もしかしたら、帰巣本能で入口付近にまで戻ってきていたかもしれない。
まあ、ありえないだろうが・・・。
「ん?お、おお・・・なんだここは?」
ありえない希望を妄想していたら、広いドーム状の空間に辿り着いていた。
壁は所々疎らに光っていて、空間の中央には井戸のような物があった。
井戸の周りにはコケのような植物が生えており、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
「なんでこんな所に井戸が?・・・貞子とか出てこないよな?」
P226を構えたまま井戸に近づき、恐る恐る中を覗く。井戸の中は光が入っておらず、真っ暗で底が見えない。
不思議と、井戸の中を見ていると心に色々な感情が湧き出し、渦巻く。
「そこの井戸は、あまり覗かないほうがいい」
「ッ!?」
突然の後ろからの声に、振り返りP226を声の主に向ける。そこには、黒く澄んだ髪を腰まで伸ばした少女が佇んでいた。
この神秘的な空間にこそ相応しい少女だが、ここまでの洞窟を通って来たとは思えない。
まさか、さっきの黒いやつが人間に化けたのか?
「お前、いつからそこにいた!?お前は誰だ!?」
「ずっとここにいた。わたしが誰なのかは、貴方の想像に任せる」
ここにいた?俺が入った時には、確かに誰もいなかったはずだ。そして、自分が誰なのかは俺の想像に任せるって?だとしたら、この少女は人間に化けた悪質なストーカーだ。
「じゃあ聞くが。その悪質なストーカーは俺に何の用だ?」
「悪質なストーカー?・・・不名誉な仇名はやめて」
少女は、志郎の煽りにムッとした顔で反論をし。お互いの間に緊張が走る。
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