case2: 山寺琴音

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あの日から優しさなんて、完全に捨て去ってしまった。 優しさなんて、もう私には必要がないーー。 それは、小学6年生の頃のこと。 私は人に比べておばあちゃん子な方だった。 学校が休みになればすぐにおばあちゃん家に行って、一緒に過ごしおばあちゃんに色んな話を聞かせてもらう。 そんな過ごし方が大好きで、私は空いている日があるとかかさずおばあちゃん家に行った。 おばあちゃんが話してくれる中でもとても印象に残っている言葉がある。 それは……。 『琴音、人に優しく出来る子になるんだよ』 『うん』 優しい人になるということ。 おばあちゃんのように、誰にでも優しくて親切な人に私もなりたいってずっと思ってた。 『私優しい子になるよ』 元気に頷いておばあちゃんに笑顔を向けると、優しい笑顔が返ってくる。 本当にそれだけで幸せだった。
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