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「なぜ、こんな真似をする」
「なぜって、この花が散ったら、あなたの命も尽きるんでしょ」
「そうだ、この木と一緒に逝く、邪魔をするな」
そう言うやいなや、頬をバシッと叩かれた。
「なぜ、そんな余計な事をする」
私が反抗的な目でいると、反対側の頬も叩かれた。
「なぜ、ワシを一緒に逝かせてくれない…」
それから私は、おじいさんの尾を持った。
「やめろ、それを引っ張るな」
構わず、桜の幹へと繋がる尾を、引っこ抜く気で力を入れた。
「桜の散る前に、木を倒せば、彼は生きていられる」
「彼を生かして欲しい」
「それが桜の願いだもの」
幹に繋がる尾が抜けた。同時に私はひっくり返る。
「馬鹿野郎ーっ」
おじいさんに殴られる度に、おじいさんと桜の気持ちが、私に流れ込んで来た。
桜と過ごした優しい日々を私も感じる事が出来た。
とても安らいだ時間だった。
妖怪も精霊も古木も、人には見えないモノ達と関わる事が出来る私には、代わりに友達も居ない。
出来ないのだ。
私は余りにも、皆と違う。
羨ましかった。
二人の絆が、痛いほど伝わった。
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