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「夏樹ちゃんっ、夏樹ちゃんっ」
私はいつの間にか気を失い、桜の古木の根元に倒れていた。
「え、佐々木さん…どうして」
「どうしてじゃ無いよ、でも良かった目覚めてくれて。倒れている夏樹ちゃんを見つけて、揺すっても起きなくて、顔もこんなに腫らして。とっても心配したんだよ、一体どうしたの」
おじいさんに殴られて目を回したのでは無く、妖力に当てられたのだ。
それを介抱してくれたのは、佐々木さんだった。
涙目に訴えて、本気で心配してくれたみたいだ。
「ごめんね。桜を見ていたら大きな枝が落ちてきて、ぶつかったんだ。でも、もう大丈夫だから」
ゆっくり起き上がり、辺りを見回す。おじいさんの姿が無かった。
何処か別の場所に行ってしまったのだろうか。
私は佐々木さんに笑顔で言った。
「桜咲いたね」
止めどなく舞い散る桜の花弁が、佐々木さんの頭に、肩に乗っかった。私にも。
風も無いのに止まずに、降りしきる。
古木が自ら花を散らしているかのように見えた。
「ねえ、夏樹ちゃん。…この花ってもしかして夏樹ちゃんが咲かせてくれたんじゃない」
とても驚いたが、顔には出さずに応えた。
「どうやって?出来っこないよ」
「そうか、そうだよね、ごめんね。アハハ。でも、この前も此処に来ていたでしょ、幹に掌をあてていたのを私見たから」
見られていたんだ。私はかなり動揺した。
「パワーを貰っていただけよ。佐々木さんがやっていたように」
「そうなんだ」
明日には切り倒してしまう事は言えず、その美しさを目に焼き付けた。
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