大都会の友達

11/12
前へ
/12ページ
次へ
「夏樹ちゃんっ、夏樹ちゃんっ」 私はいつの間にか気を失い、桜の古木の根元に倒れていた。 「え、佐々木さん…どうして」 「どうしてじゃ無いよ、でも良かった目覚めてくれて。倒れている夏樹ちゃんを見つけて、揺すっても起きなくて、顔もこんなに腫らして。とっても心配したんだよ、一体どうしたの」 おじいさんに殴られて目を回したのでは無く、妖力に当てられたのだ。 それを介抱してくれたのは、佐々木さんだった。 涙目に訴えて、本気で心配してくれたみたいだ。 「ごめんね。桜を見ていたら大きな枝が落ちてきて、ぶつかったんだ。でも、もう大丈夫だから」 ゆっくり起き上がり、辺りを見回す。おじいさんの姿が無かった。 何処か別の場所に行ってしまったのだろうか。 私は佐々木さんに笑顔で言った。 「桜咲いたね」 止めどなく舞い散る桜の花弁が、佐々木さんの頭に、肩に乗っかった。私にも。 風も無いのに止まずに、降りしきる。 古木が自ら花を散らしているかのように見えた。 「ねえ、夏樹ちゃん。…この花ってもしかして夏樹ちゃんが咲かせてくれたんじゃない」 とても驚いたが、顔には出さずに応えた。 「どうやって?出来っこないよ」 「そうか、そうだよね、ごめんね。アハハ。でも、この前も此処に来ていたでしょ、幹に掌をあてていたのを私見たから」 見られていたんだ。私はかなり動揺した。 「パワーを貰っていただけよ。佐々木さんがやっていたように」 「そうなんだ」 明日には切り倒してしまう事は言えず、その美しさを目に焼き付けた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加