3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
3月の終わり、最初の一年が終わろうとしている。
それは、高校生活であり。
都会暮らしであり。
一人暮らしでもある。
寂しくなどない、むしろ清々する。
自然に囲まれた山里育ちだったが、私の周りに居たのは騒がしい奴らばかりだった。
だから、東京は静かで暮らし安い。
修業式が終わって、帰路に付く。
クラスメートの人達は、たった今から春休みだとばかりに、浮かれた話題に花を咲かす。
私も何度かカラオケや買い物に誘われたが、全て断ってきた。お陰で私に話し掛ける者は誰一人と居ない。
生憎、人は好きじゃないし、無理言って一人暮らしさせて貰っているので経済的にも都合が良い。
ただ、私は此処では本当に一人ぼっちだ。
「夏樹ちゃん」
空耳かと思って振り向いた。
名前で呼ばれる事なんか、とても珍しい事だったから。
「えっと、佐々木さん、…今呼んだ?」
「うん、呼んだよ」
人懐こい笑顔をしていた。
彼女はクラスメート、真面目で落ち着いた娘で、バカ騒ぎしているとこなど見たこと無い。私とは何度か会話した事がある程度の仲だが。
何の用事か分からなかったが、私は黙ったままだった。
「あのさ、今日これから暇?」
図書館に寄って行くつもりだったが、それだけだった。
「はい、これと言った用事はないけど」
「もし良かったら、お花見していかない」
最初のコメントを投稿しよう!