3人が本棚に入れています
本棚に追加
すると今度は、おじいさんが佐々木さんのスカートの裾を持ち、捲り上げようとし始めた。
「うわっ、このやろう何をする」
咄嗟にその手を払った。
「きゃあっ」
佐々木さんが私を睨んだ。
「あ、違うの、これは、その…」
「私、あなたに何か悪い事した?」
「いや、ごめん…」
その後、二人黙っていたら、佐々木さんは帰ってしまった。
「本当にワシの事が見えるとは、珍しい人間だて」
故郷を思い出す。田舎には、こんな迷惑な奴らが多く居た。
皆、悪戯好きで自分勝手で、はた迷惑以外何も無いのだ、妖怪なんて。
「なあ、なぜ、この助平じじいのせいだと弁解せんかったのだ」
こいつらは、私が見る事が出来ると分かると、必ずちょっかいを出してくる。
「なあ、なぜ、あの娘は怒って去って行ったのだ」
「うるさいっ」
「はて」
私が怒鳴っても、おじいさんは首を傾げるだけだった。
お陰で怒る気が挫けた。決まってこいつらに悪気は無く、ただ暇なだけなのだ。
「なあ、喧嘩でもしたのか」
「この桜の木に、花が無いから帰ったのよ」
妖怪との関わりは持ちたく無いから、適当にあしらってこの場を早く去るつもりだったが。
「そいつは済まなんだな」
おじいさんの寂しそうな口調よりも、素直に謝られた事に驚いた。妖怪が非を認めるなんて珍しい事だったから。
最初のコメントを投稿しよう!