3人が本棚に入れています
本棚に追加
それから一週間が経った。
「凄いな」
鮮やかな桜色の花が、その古い幹から伸びた枝の全てに咲き誇っていた。
見上げると、花越しに見える黒い枝のコントラストが幻想的で、吸い込まれるように強く惹かれてしまう。
精一杯、美しく在ろうと生きていた。
儚く、花弁が降りそそぐ。
「最後の力ね」
この古い桜の大木はもう死ぬんだ。
「ああ、ありがとうよ、人間の娘」
おじいさんは根元に座り込んで俯いたまま応えた。
弱っていると思った。
「これであなたの、お願い事は叶えられたわね」
「…そうだな」
そう、おじいさんの願い事は叶った。
「だけど、もう一つあるの」
何の事かと、おじいさんは頭を持ち上げ私を見た。
「この木を切り倒すの」
「な、何を言っとるのだ、切り倒すだと、お前にそんな事が出来る訳がない」
「そうね、だから役所に言ったの、朽ちた枝が折れて危ないからって苦情をしたの、そしたら直ぐ対応してくれて、切って貰える事になったわ」
おじいさんは立ち上がり、私に詰め寄った。
「なぜだっ」
そして胸ぐらを掴まれた。手の皮膚が真っ赤になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!