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ピンポーン(呼び鈴)
む! 誰かきたぞ。この感じは……みかんだ!
「んっ、ディス子さん、おはよう」
ねのは伏し目がちに少し伸びた髪を指でくるくると弄っている。
「ああ、みかん。おはよう。どうした? 今日は学校はないのか?」
「んっ、今日は土曜日。学校はない」
土曜日? なんだそれは? 地球では学校がない特別な日があるのだろうか?
「今日は髪を切りにいく。近くに新しい美容室ができたんだ。ディス子さん、一緒に行こう」
ビヨウシツ? また聞き慣れない言葉だな。髪を切るのか? 我々宇宙人は無闇に髪が伸びたりはしない。体の代謝をコントロールする事で伸ばすことはできるが、基本的に面倒なので伸びないようにしている。
「そうか、地球人は髪が伸び続けてしまうのか。不便だな。しかし、ねのはどうした? せっかく友達になったのだ、こんな時こそ誘えばいいではないか」
「んっ……まだ、ちょっと、恥ずかしい……」
みかんは髪を弄ったまま少し赤くなって目を伏せた。
かわいい! 普段は張り付けたような無表情のみかんが時折見せるこんな仕草がたまらない!
はっ! これではジュラルミンと変わらんぞ! このチョコレート・ディス子、あんな変態に堕ちてたまるものか!
「よし、わかった。一緒に行こう。おーい、ジュラルミン。出掛けるぞ! ついてこい」
「はいですのー」
こうして私はねのに誘われて、新しくできたというその『ビヨウシツ』とやらに行くことになった。
髪など自在に調節補修できる我々にとって、少々縁遠い場所のようだが、これも地球人の文化の偵察、心して行こうではないか。
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