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基地(自宅)を出て20分ほど歩き、街への橋を渡り、コンビニを通りすぎて少しの所。
街へはこのまままっすぐ行くが、信号のある交差点を右折して町外れへと進むとその美容室が見えてきた。
1階部分は駐車場になっており、建物の端にある階段をのぼった2階部分が目指す美容室になっている。
美容室の看板を見ると……
『カリスマ美容室』
と、でかでかと書かれていた。サイケデリックな電飾、ネオンというのか。ピンクやグリーンなどカラフルに輝いている。
「うっ……ディス子さん、帰ろう……」
「何を言っている、みかん! 来る途中もあんなに楽しみな感じにだったじゃないか。どうしたんだ、急に」
「ん……どうもこうも、これ……うさんくさすぎる」
みかんが楽しみにしていた今までの態度とはうって変わり、ものすごいジト目で看板を見ている。
「たしかに冗談みたいなネーミングですわね。何かのユーモアではありませんの?」
偵察レポートに載せるための写真を撮るデジカメを首から下げたジュラルミン。
こいつもみかんと遠からぬ意見のようだ。
しかし、ジュラルミン。お前そんな風にカメラを下げていると自由研究の子供にしか見えないぞ?
ジュラルミンの体格に比べてデジカメがやけにでかい。
「ふむ、まあいい。せっかく来たんだ。偵察がてら入ってみるか」
「ちょっ……お姉さ……」
カラン、コロン!(扉の鈴)
「たのもう! 新しくできたビヨウシツと聞いてきたのだが」
中に入ると、そこには細身ながらも引き締まった筋肉質の肉体を持つ男が1人。綺麗に整えられたボウズ頭で、タンクトップにスキニーパンツ姿でスラッと立っていた。
「あらン! お客さんね? いらっしゃい。アタシがカリスマ美容室の美容師、狩須磨(かりすま)よ! よろしくねン」
狩須磨と名乗ったその男は顔の横で添うように軽く手を握り、ニコッと微笑む。
「親しみを込めて『スマ子』って読んでちょうだいね(ハート)」
ぐはぁ! なんだこいつは。なんというか、なんだこの……新しい感じの奴だ。
私の後ろでは、ジュラルミンが目を丸くして絶句し、みかんが青筋を立てて震えている。
「み……みかんさん、あ、あれ、なんですの……?」
「ししし知らない。多分オカマ……」
オカマ……? こういう新しい感じの奴をオカマというのか?
「オカマじゃなくてオネエよ! 失礼しちゃうわねぇ!」
スマ子は冗談を交えた様子で笑ながらジュラルミンとみかんを一瞥した。
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