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「それで? 今日はどの子がお客さんなの? 後ろのカメラ下げた金髪の子かしら?」
「ああ、それならこっちのみかんが……」
後ろを振り返り、みかんを紹介しようとすると、みかんとシュラルミンがのっぴきならない表情で、真横に目を逸らしながら私を指差している。
「おい! お前ら話が違うぞ! 私は偵察をだな……」
「あ~ら、あなただったのね? どうぞこちらへいらっしゃい」
スマ子はにこりと微笑み、大きな鏡の前に置かれた椅子をポンと軽くたたく。
まあ……仕方ない。ビヨウシツがなんなのか偵察も込めてここは偵察隊長(自称)の私が行くか。それに我々なら髪などいくら切られた所で一瞬で再生できる。
「どうしたの? 怖がらなくても大丈夫よ、取って食いやしないわ―☆バチン!(ウィンク)」
「!!!」
シュバッ!(回避)
その動作に私は強烈な戦慄を覚えて全力で回避行動を取った。
うおぁ! なんだ今の戦慄感は! この私が……退いただと……
「あら、何も避けなくたっていいじゃない?」
初めてのビヨウシツに私が敏感になっているだけか……若き日は惑星を拳で砕いたと言われる大佐に直々に鍛えられたこの私を、目線だけで気圧せる地球人がいるとは思えない。
「うむ、ではよろしく頼む」
私は覚悟を決めて誘われるまま椅子に腰掛けた。
「あら、凛々しいのね。ちょっとタイプかも!」
ゾクッ!!
なんだ! この悪寒は……シュラルミンのものとはまた違う……感じた事のないものだ。
「さてと、今日はどんなスタイルがお望みなの? え~と……」
「ディス子だ。私はチョコレート・ディス子という」
「んまぁ! かわいいお名前じゃない! いいわね、羨ましいわ!」
胸の前で両手の平を合わせて満面の笑みを浮かべるスマ子。
「お望み……と言われてもな、あまり髪に頓着した事がないのだ」
スマ子は再び小さく微笑むと、私の長い黒髪に指を通した。
「そうなの。うん、でもすごくいい髪じゃない? ハリ、コシ、ツヤ、どれを取っても並みじゃないわ」
髪を見るスマ子の目は先程までの冗談まじりのものとはうって変わって鋭い。
「まるで今生えたばかりのような初々しさ、その割には手入れの行き届いたような指ざわり、羨ましいわ……」
それはそうだろう。髪など特に頓着しなくても体ごと再生できるのが我々だ。常に最高の状態になるように体が整えられている。
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