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「じゃあ、今日はおまかせって事でいいわね?」
「ああ、それで頼む」
スマ子はニコリと笑うと、店の奥に目を向ける。
「ハイ! あんたたち! お待ちのお客さんにコーヒーでもお出ししなさい!」
そしてパンパンと2回手を打った。
「はい! あねさん!」
すぐさまスマ子より大柄な屈強な男性2人がコーヒーを持って現れる。
「うちの見習いのマーガリンとピーナッツよ。よろしくね」
地球人らしからぬネーミングセンスだが、我々のものに近い。なかなかではないか。
店の待ち合いソファーで小さくなっているみかんとジュラルミンの前にコーヒーが置かれた。
しかし、二人とも顔も上げようともしない。よく見ると顔色も優れず小刻みに震えている。
ガクガク……ブルブル……ガタガタ……
どうしたのだ? 具合でも悪いのだろうか?
「あら? お気に召さないのかしら? ジュースの方が良かったかしらね、うふふ」
どうやらそのようだな。
「さて、始めようかしら。お任せ……そうねぇ……ディス子ちゃんが一番魅力的に見えるものにしようかしら」
スマ子は鏡越しに私を見ながら、私の髪を手で解き整えている。
「ディス子ちゃん、今のままでも十分魅力的なのよね。モテるでしょ?」
主にジュラルミンや同性にな。
「でももうちょっとだけ、ディス子ちゃんのベストは……」
ハサミを手にしたスマ子。途端に辺りの空気が変わる。一切の波のない水面の如く、研ぎ澄まされた感覚が辺りを支配した。
「!!!」
スマ子が私の髪にハサミを入れる。髪間をスルスルと流水のように動くハサミは、確かに切っているにもかかわらず、それに切られている感覚は一切ない。
スマ子の目はまるで、数キロ先の針の穴すら居抜きそうなほどに繊細で鋭かった。
こいつ……只者ではない。
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