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ウィーン
突然自動ドアの開く音がする。
「さーて、洗濯、洗濯っとぉ……ぬおっ!」
「!!!」
見ると中年男性が洗濯物を持って入ってきたではないか。バカな、地球人は光の有無で休息する習性があるのではないのか!
「……あ……え……せ、洗濯機ぃ~は、ど~こかな……(脂汗)」
中年男性は気の毒な程にオドオドしながら、それでも平静を装い、私を見なかった事にするため、鼻歌を歌いながら必死に目を逸らしている。
……ものすごい気を遣われている……すまない。
気まず過ぎる空気の中、拷問のような遅くて長い時間が無言で過ぎていく。
「……」
「……」
ピピッ!
「おっ! 俺の洗濯おーわりぃ~」
男性は小さな洗濯機を使ったので私より終わるのが早かった。
いそいそと中身を取り出してそそくさと去っていく。
一刻も早くこの場を去りたいといった様子だ。
「ふう。気遣いに感謝だな。しかし、地球人にも夜間に休まない者がいるのか。気を付けねば……」
早く洗濯が終わるのを、そして誰も来ない事を祈り、私は1人、腕を組んで洗濯機が止まるのを待った。
しかし…
またも外で話し声が聴こえる。
「ここに自動販売機があるんだ。僕が飲み物を買ってくるよ」
ウィーン
今度は若い青年が自動ドアから入ってきた。
チラッ……チラッ!?(2度見)
うわぁ……2度見された!
恥ずかしい……いっそのこと洗濯機の中に洗濯物と一緒に入ってしまいたい!
と、青年の顔がみるみる青ざめていく。
「うわぁぁぁぁぁ! 変態だぁー!」
「なに!? 違う! 私は……」
青年は私が反応するや否や飲み物を諦め、一目散に逃げていく。
「待ってくれ! 私は……待てぇー!」
「うわぁぁぁぁぁ! 追ってきた! 助けてくれー!」
外にいたその友人と見られる青年も、様子を見て驚いたように逃げていく。
「待てぇー! 違うんだ! これは……これはー!」
「お巡りさん、助けてくださーい!」
お巡りさんはやめてくれ!
はっ! お巡りさんとなるとこの図はまずい。深夜のコインランドリーで半裸の女が若い青年を追いかけている!
このままでは何だか色々なものを失う気がしたので、私は弁明を諦めてコインランドリーに戻った。
「おっ! 洗濯機が止まっている! よし、急いで帰ろう。テレポート!」
シュッ!
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