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「外はどうだ……」
「今のところ平和で御座いますよ。ですから陛下にはまだ長生きして頂かないと……ザイード様にも少しばかり希望が差し掛かったようで御座いますから──」
「ふ──…ザイードか…」
王は小さく呟いて頬を微かに緩めた。
「あれに特別な女ができたようだ──…ハレムの女か? お前は知っているか?どのような女か会ってみたい…」
「ええ…ならば明日にでも連れて参りましょう…二日後には日本に帰ってしまわれますので」
「──…日本…」
「ええ」
「なんと──…異国の女か…」
「左様に御座います……」
アレフの応えに王は深い溜め息をゆっくりと吐く。そして急に含み笑いを漏らしていた。
「……ふっ…くくっ…そうかっ…なるほどな──…」
何かを理解したように、王はさも可笑しそうに感慨深げな表情を崩して笑い続ける──
その様子にアレフも少しだけ肩を揺らしていた。
「よくもまあタイミングよく異国の女に惚れたものだな──」
「ええ…まさかの流れでは御座いましたが……やはり──これがザイード様の“カダル”…それに間違い御座いませんな」
「うむ…ならば余ももう少しばかり、神の国に連れて逝かれるのは待っていて貰うとするか──…」
背もたれに頭を預けて首を少しばかり仰ぐと、王は天井を見上げ遠くを見つめて笑みを浮かべた。
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