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アレフは王の言葉にゆっくりと頷いた。
「だが、その意味もまた──…これを次に手にする者によって変わるのだろう──…」
「………」
「アレフ……」
「はい──」
「たった一人──…上に立つ者の器量で国はどうにでもなる──…」
「……仰る通りで御座います──」
「…だが……国は一人では建てられん──」
「ええ」
「ザイードには助けが必要だ──」
「………」
「どんなに立派な器とて、埃を被って仕舞えば輝けぬ……ましてや──…場違いな物を盛り付けられてもいい味を引き出せん──…」
王はアレフに顔を向ける──
「あれを導いてやってくれ──…お前の導く先に、あれの望む物がある筈だ──…ターミルと二人…どうか頼む──」
柔らかくもあり重くもある──
王のその言葉にアレフは目を閉じて深く頭を下げた。
王はそれを確かめてふっと笑った。
「兎にも角にも早ようその日本の娘を連れて来てくれ──…今はそれが楽しみで仕方ない…今宵は眠れん気がするほどだ」
今までになく顔を緩めてその娘を思い描く王をアレフも笑いながら見ていた。
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