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「そんなことは……ないとは絶対言いませんな」
昔を思い出したのかアレフは笑いながら口を開いた。
「睡眠を削って額に傷を沢山負った……アデル様が描いたお前の伝記絵日記は儂がしっかり語り継いどるぞ!」
「───!…」
ターミルはガハガハと大口で笑う。
「どーりで新参者の筈が未だにその話を知ってるわけでございますな──…なるほど゛、出どころはターミル殿で御座いましたか」
怒ったかどうかは謎だが、無表情で前を向いて歩くアレフの横をターミルは満面の笑みで肩を並べていた。
「して、ザイード様の様子は?」
「はは、居室を見たらばわかるわい」
聞かれて笑いながら応えたターミルにアレフはなるほど、と溜め息混じりに返す。アレフはザイードの居室の前に立つと扉を叩いた。
「ザイード様──…入りますぞ」
どうせ入っても良いか確認したところで無言だろう。アレフはそう思い、有無を言わさない問い掛けを扉の外から掛けてゆっくりと押し開く。
「国王に会ってきたか」
アレフが居室に入った途端、ベットに仰向けのままザイードはそう声を掛けた。
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